ウスバキチョウ |
一昨年は春からいろいろ計画を立てたが、思わぬ胃ガン宣告で幻の
計画になった。昨年は出発直前、今度は妻が緊急入院、大腸ガンの
手術を受け、断念せざるを得なくなった。
今は”ガン夫婦”である。体調もさして良くはなく、お互いに支え合って
1人前というところだ。無謀にもことし、ふたりでチャレンジすることに
した。
6月23日~27日まで北海道に行くことにして航空券も手配した。しか
し、何ということだろう。今年の北海道は雪が多く、銀泉台に入る林道
が28日まで入山出来ないという。
ウスバキチョウの時期はもう遅いのだが、今年を逃したら年齢、体力か
らみてもうチャンスはないだろう。そう考えて7月7日に層雲峡に入った。
銀泉台からコマクサ平に至る登山道は大きな雪渓が4つあった。やは
り雪は例年以上に多いのだという。
その雪渓をトラバースして行くのだ。行きも帰りも片側は断崖のように
切り立っていて、脚がすくんだ。「本当に大丈夫だろうか」と不安が頭を
横切った。正直、怖かった。
それでもコマクサ平に上がると、そこは別天地だった。コマクサが咲き
乱れ、高山植物があちこちに咲いていた。
しばらくするとウスバキチョウがすーっと飛んできた。
見るとかなり飛び古し、あの輝くような羽化直後の黄色い鱗粉は剥げ
落ちていた。それでもやっとウスバキチョウに会えた。ボロのウスバキ
チョウでもぼくには宝物のように思えた。
下山の雪渓はもっと怖かったが、ウスバキチョウに会えた喜びで一歩
一歩雪を慎重に踏みしめる足取りが軽く思えた。
ペンションに戻ると、「ガン夫婦がよく頑張ったねえ。すごいよ」とオーナ
ーが褒めてくれた。