ツマキチョウ |
クヌギ、エノキ、カシなど自然の雑木林が残り、林を分ける
ように水田と小さな疎水があった。
散歩に行くと蛇とばったり会ったり、キジの夫婦が巣作りを
していたり、自然がたっぷりとあった。
秋が深まると、カシの木の周りにウラギンシジミが羽を輝か
しながら舞っていて、晩秋の太陽を浴びながら、それを見て
いると、蝶を愛する幸せを感じさせてくれるのだった。
林を縫う散歩道には、春になるとツマキチョウが姿を見せた。
この辺ではもう見ることが出来なくなってしまったが、坪井
では必ず愛らしい飛翔が見られた。
ツマキチョウは春を実感させてくれる蝶だ。
2年前から、この樹林が大規模な開発に見舞われることにな
った。大人が三人ぐらい手をつないで抱えても届かない貴重
なカシやクヌギがあっという間に切り倒され、半年もすると
あの樹林は跡形もなく、茶色い荒地に変わってしまった。
住宅都市整備公団の団地建設だという。
一木一草残さない徹底した整地。そこにやがてしゃれた団地
と新たに植えられた街路樹が団地のシンボルになるのだろう。
ツマキチョウはもうどこにもいなかった。
あのキジの夫婦はどこへ行ったのだろうか。