ホシミスジ |
れる。
ローラン・プティの作品などはその最たるものだろう。
プティの代表作に「若者と死」がある。ジャン・コクトーの台本に振付
けた1幕のバレエだ。
モンマルトルの貧しいアパート。売れない若い画家が画を描いてい
る。自分を認めない世の中に若者は激しい苛立ちがある。
そこに女が入って来る。若者は女に迫るが冷たく拒絶される。
若者と女がいさかいを起こし、若者は絶望の挙句首を吊って死ん
でしまう。そこにドクロの仮面をつけた死神が現れ、若者を屋根の
上に連れて行く。若者の魂はパリの空をゆらゆらとさまよう。
オペラ座界隈をさまよってタクシーに乗ると、アラブ系の運転手は
きれいにライトアップされたシャンゼリゼ通りを抜け、「裕仁、ニッポ
ン、万歳!」と笑いながら話しかけてきた。僕は黙って鮮やかな色
彩の魔術のようなエッフェル塔を振り返って見ていた。
「若者と死」を思い浮かべていたのだ。
パリにエスプリを感じるのはいつだろう。クリスマスのシーズンなの
か枯葉の頃なのか。
ホシミスジにはそんな洒落たパリの小粋な雰囲気が漂っている。
ミスジチョウやオオミスジ、コミスジなど似たような蝶は多いのだが、
どうしてホシミスジにそんな連想が重なってしまうのだろう。