リンゴシジミ |
のだろう。
こどもの頃流行った歌に「リンゴの唄」というのがあった。
紅いリンゴにくちびる寄せて
だまって見ている青い空
サトウハチローが作詞、並木路子が歌っていた。
古い小さなラジオから毎日のように流れていた。
北海道に行ってこの愛らしい蝶に会いたいと思った。何度か探したが
出会いはなかった。いつもの年は6月20日過ぎから発生するのだが
ことしの北海道は季節の歩みが2週間ほど早いというので、6月中旬
に出発した。
ところが層雲峡近辺は6月に入ってから雪、雨、みぞれ、曇りと10日
以上天候の悪い日が続き、蝶がなかなか発生しないし、少ない。
東京に帰る日「後5日後だねえ」と言われた。
それでも食樹であるスモモの木をあちこちで叩いた。最後の一本、そ
う思った時、偶然のようにリンゴシジミが姿を見せた。うれしかった。
スモモは開拓に入った農家の人たちが植えた木である。
営農を放棄した荒れた農家の周りに残ったスモモに依存してこの蝶は
生き残っている。はかなく哀しい蝶でもある。