コムラサキ |
もう夏休みに入っているので、宿はどこも満室で、やっと河童橋の畔
の旅館が1室だけ空いていてやっと予約が取れた。
土曜日に予約を取って、来週の天気予報を見ると火曜日から段々天
気は良くなってぼくらが上高地に入る水、木は絶好の天気だった。
ところが天気予報は当てにならないもので、火曜日になると木曜日は
なんと雨。
ぼくらは木曜は岳沢に登ってちょっと遅いかもしれないが、タカネキマ
ダラセセリと旬のクモマベニヒカゲでも観察する計画だった。
予報通り、水曜の夜から雨が降り始め、朝食のころはそれこそすごい
豪雨だった。もうすっかり意気消沈して「10時まで宿にいて、もう帰ろ
うか」と話していた。
部屋に戻っても雨は激しい。
ところが、9時頃になると雨が何故か止み、雲の間から薄日が射して
きた。それでもテレビの天気予報は「今日は雨です」と繰り返していた。
宿を出た僕らは岳沢の登山口に向かった。
少し登り始めると、空は奇跡的に青空に変わったが、登山道はそれこ
そ滝のように水が流れている。登山者たちはそこを巻いて登って行く。
あんまり危険なので僕らは断念した。
梓川は泥水のようになっていた。その遊歩道を歩いているとコムラサ
キが飛び始めた。あんな豪雨だったのにきらきらとその翅は輝きとて
も美しかった。