安西冬衛の有名な短詩に 「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った」 というのがある。
韃靼海峡というのはサハリンとシベリアの間にある間宮海峡の ことだ。昭和の初めに詠まれているが、軍艦の上にいたとき、そ の上空を飛んでいった蝶がいたのだろう。
黒かったのか、茶色だったのか、黄色だったのか、その色彩も はっきりとはしない。
このスジグロカバマダラではないことは確かだ。
渡りをすることで知られるこのカバマダラの仲間は生命力がとて も強い。
白水隆先生の「日本産蝶類標準図鑑」(学研)によると、寿命の 最長記録は♂120日、♀157日とある。
交尾回数も♂の最高が12回とあるから、なんともうらやましい限 りの絶倫ぶりである。 |