ムラサキツバメ |
1957年に出版された「ヒメギフチョウ」をはじめ、「高山蝶」「日本アル
プスの蝶」などの名著がある。
ぼくは「ヒメギフチョウ」を持っているが、若い頃それを何度も読んで安
曇野や白馬のヒメギフチョウに思いを馳せたものだ。どれも今では古書
で10万円以上の値段がついている。
その田淵の人生をドラマに描いた「蝶の山脈」がNHKBSで放映され
た。とても感動的な作品になっていた。戦後の田淵の生活は食べるもの
にも不自由な清貧の中での自然観察だったという。
中でも常念岳に何度も登り、タカネヒカゲの生態を解明するシーンは胸
が熱くなるものがあった。
ガンと闘病中のぼくは何とかもう一度常念岳に登り、タカネヒカゲの写真
を撮りたいと思っていた。しかし、体力的にはもう無理だと言われていた。
7月のある日、息子が「常念岳に一緒に登ろう」と言ってくれた。その言
葉に後押しされ、北アルプス登山を決断した。荷物は全部息子が担いで
くれ、空身一つの登山だった。喘ぎ喘ぎ何とか登り切ることが出来た。
ハイマツの生える3000メートル近い砂礫地でタカネヒカゲやミヤマモン
キチョウに会えた時は感激で涙がこぼれそうになった。間近に槍ヶ岳が
そびえ立っていた。
その時のことを思いだしながらテレビの「蝶の山脈」を見つめていた。
